夜行列車

ポーランド映画の巨匠イエジー・カワレロヴィッチ監督作品。1959年。

引き続き、カワレロヴィッチ作品のご紹介。
この映画は、ずっと昔、NHKBSでポーランド映画特集とかで放映されたのを見たのが最初だった。そのときビデオに録画し、数年後DVDに焼き直して、もう何度見たか分からない。焼き直す段階で既にテープが相当痛んでおり、画質最悪なままデジタル化しているので、もやは心眼で見ているようなもんだけど。(笑)

この映画は『尼僧ヨアンナ』とは対照的に、1959年当時の現代ポーランドが舞台となっている。都会(たぶんワルシャワ)から海辺の保養地に向かう夜行列車に乗り合わせた人々、とりわけ、ひょんな成り行きから同室になった男女を中心に現代人のアンニュイな人生模様を描いた作品だ。

このまさに「アンニュイ」というフランス語がぴったりな雰囲気が通底音として全編に流れていて、狙ったようにはまるジャジーな音楽がさらに雰囲気を盛り上げてくれる。メランコリーな気分になると、とたんに見たくなる映画なのだ。


主演のふたり
二段ベッドのコンパートメントの狭さが異様に効果を生んでいる。主人公の中年男性は終始ナゾめいた表情をみせ、最初見たとき知り合いに似てると思ったので、頭にこびりついて離れない。


魅力的なヒロインを演じるルチーナ・ヴィニエツカさん。恋と人生に悩める乙女です
彼女はこの作品で1959年度ヴェネツィア映画祭最優秀女優賞受賞

同じ客車に乗り合わせた人々も個性的で面白いストーリーを展開してくれるが、なんといってもコンパートメントのこの二人がミステリアスで面白い。ヒロインは『尼僧ヨアンア』のヨアンナを演じたルチーナ・ヴィニエツカ。謎の中年男はレオン・ニェムチック。一方、彼女を追いかける元彼を演じるのは、どっかで見たと思ったら、『灰とダイヤモンド』のズビグニエフ・チブルスキーだ。コンパートメント内部の「静」と、チブルスキー青年が表現する「動」で、作品に絶妙な動きが生まれている。映画の終盤に山があるのだが、それまで退屈せずに楽しめるのは、このチブルスキーの動きに負うところが大きいと思う。

どういう映画とひとくちに言いにくいが(ネタばれしちゃうと悪いので)、ある意味、欧州版ヒッチコック映画という表現もありかなと思う。


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夜の終りに


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