舞踏会の手帖

1937年の仏蘭西映画。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督。

いくらトシヨリの私でも、さすがにこれはリアルでは見てない。昔、NHKBSで放送されるのを見つけて「あ、これだっ!」と思って勇んで録画したものを持っている。ビデオに採ったものをDVDに落としたため、画質の悪さは天下一品、もはや心眼で見てるようなもんだけど。

何が「これ」なのかは後で説明するが、この映画は、夫に先立たれた若き未亡人が生きる希望を喪失するなか、思い立って、16歳の舞踏会デビュー時の手帖に記された青年達を訪ね歩くというオムニバス形式の映画。まあ、ざっくり言って元祖自分さがしムービーともいえる作品で、主演のマリー・ベルの美しさと優雅さ、キュートさがこれでもかってほど際立つ夢のような映画となっている。脇を固める俳優陣も見事。


舞踏会の手帖を見つけ、回想に耽るヒロイン、マリー・ベル

最初に訪れたジョルジュの家。彼は彼女の結婚を知って自殺した。
そのせいで狂ってしまった母親。

母親を演じるフランソワーズ・ロゼーの怪演は、この映画の白眉だと思う。
夢に出てきそうな迫真の演技だった。

文学少年だったピエール(ルイ・ジューヴェ)はキャバレーのあるじ兼泥棒に崩れていた。

この俳優は他の映画でも見たことがある。一度見たら忘れられない顔をしている。

作曲家志望だったアラン(アリ・ボール) は神父になっていた。

詩人気取りだったエリック(ピエール・リシャール=ウィルム)はアルプスのガイド。

ご覧のように、行く先々でシチュエーションが目まぐるしく変わり、マリー・ベルのファッションもしぐさも変化するので、見ていて飽きない。

政治家を目指したフランソワは、田舎町の大立者の町長。
ちょうど再婚の挙式の日に行き当たった。

この後、もう3人訪問するのだが、なぜかDVDがフランソワのところで切れてしまっている!
な、なんでや〜〜(゚◇゚;)!!!ううっ、覚えてるから別にいいけど…どうせ見ても心眼だし…(泣)

さて、話は戻って、もう数十年前の昔話になるが、私が通っていた中高一貫の女子校は、今はどうか知らんが、当時は、各学年の担任教師はチームで持ち上がりだった。つまり、中1の時の担任の先生達は、多少の変動はあっても原則高3までご一緒というシステム。もちろんクラスは変わるが。なので、国語や英語、数学の教師が中心に担任チームを形成していた。これは逆に見れば、他学年の担任の先生は、どうあがいても6年間ご縁がないということ。

で、いつ気がついたのかは忘れたが、高2の時、他の学年の担任をしている英語の先生に興味を持った。いや、カッコいいとかなんとかじゃない。特攻隊の生き残りの彼は私の父より年上だったが、いつも校内誌にエッセイを寄稿していた。それを読んで以降、狂気のようにファンになってしまったのだ。

当時は、今みたいに本をそのまま綺麗にコピーできるようなマシンはなく、いやどこかにあったかもしれんが、高校生の手の届くところにはなかったので、私は一念発起して、彼が今まで発表してきたエッセイを書写することにした。自分の手で一冊の本にまとめようと。

当時、白い本が流行し始めたころで、それにマス目の下敷きをこさえて、一字ずつ書き写していった。寄稿作品の中に「映画の周囲の思い出」というかなり長いエッセイがあり、その中に「舞踏会の手帖」が出てくる。

このエッセイの中にはおびただしいほどの映画のタイトルが出てくるが、意識的に探してかなり見ることができた。どうしても見ることができなかった作品のひとつが、この「舞踏会の手帖」だった。ひょんな幸運から、BSで偶然見ることができた映画なだけに、必死で録画して何度も何度も見た。若かりし頃の彼がどんな気持ちでこれを見たのか、タイムワープしたような気分で見ていた。

そんな切ない思いとは別に、たび重なる視聴にも耐えうるものを、この映画は確かに持っている。ひとつひとつのエピソードが短編映画そのものであり、それだけで絵になるシーンの連続。観るものを飽きさせない要素とは何か、考え抜かれた作品だ。今の映画も悪くはないが、古いフランス映画の底力、やっぱりスゴイなと思う。




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